ドイツ留学は最高のトラウマ

昨日、ドイツ語のリスニング教材として、Direkt aus Europa auf Deutsch を紹介したら、意外にも見てくださった方も結構いるみたいで、ドイツ留学を目指している方も世の中にはまだまだいるのかな、と嬉しくなりました。

 

(Direkt aus Europa auf Deutsch のスクリプトはまたいずれプログラミングで分析して、重要単語5,000 語や、よくあるフレーズなどのヒアリングを効率よく練習するにはいつの回を聞けば良いか、調べて発表したいと思っています。)

 

ドイツ留学を目指している方が読んでくださっているかもしれないので、時々昔の留学の思い出を書こうかな、と思います。自分自身とても懐かしいし、それが誰かの為になるなら最高です。

 

 

自分の様にドイツでDiplom まで取得した日本人は、結構な少数派だと思います。レアな経験なので、誰かの役に立てれば、と思います。

 

 

 

何から書いていいかわからないけど、どうしても言いたいのは、Diplom (自分はVWL:Volkswirtschaftslehre 経済学でした)を取るのは、死ぬほど大変でした。

今でもトラウマになっています。

でも、ドイツ留学で、文字通り一皮むけたというか、人間が強くなって、自分の人格が完全に変わったと思っています。(親に感謝です。)最高の経験でした。ドイツ留学を目指している人は、是非実現してほしい。

 

 

 

トラウマというのは、本当にそうです。

何せ勉強することが多い。

日本の大学の様に、入学は難しくて、卒業が簡単、ではありません。

ドイツは、国の試験に受かればどの大学でも入れます。でも、本当によく勉強しないと、卒業できません。沢山の人が、卒業できずにやめていきます。

 

数多くの単位を取らなくてはならず、単位を取るために、英語やらドイツ語でひたすら論文を読むことになります。

一週間で大体3、400ページくらいは少なくとも読む感じです。一日中読んでいました。

そして怖いのは、学期の最後に、試験を申込んで、落とすと(もしくは棄権すると)、Maluspunkt という罰がつきます。これが確か5個たまると、強制退学です。

では自信のある科目だけ試験を申込めば良いかというと、もちろんそうですが、そんなことしていたら、いつ卒業できるかわかりません。

夏学期にしかない単位、冬学期にしかない単位もあり、下手をすると一個試験を見送ると、簡単に卒業が1年延びます。

 

ドイツのDiplom は、日本やアメリカで言う学士課程~修士課程修了までを包含したもので、取得するとその上がもう博士課程になります。僕は日本で4年生の大学を出ていたので、その単位をまず移行しましたが(従いやったのは言ってみれば修士課程の部分だけ)、それでもDiplom 取得まで4年かかりました。(最初の1年は授業出ても、全くついていけないので、単位は取れません。その意味では、少しついていける様になってから3年かかりました。)

 

早く卒業したい、でも焦って試験を受けると、Maluspunkt が5個に達して、強制退学。すべてがパーになる。

このぎりぎりのストレスの中で、4年間戦い続けました。

(とにかく一単位とるのに理解すべきことが多すぎて、毎日論文や教科書読みっぱなしの上、試験前日はほぼ徹夜。)

 

 

これがどれくらい精神をすり減らしたかというと、卒業してからもう15年以上経つのですが、今でも時々夢に見てうなされるくらいです。

 

「ああ、自分は日本にいて、企業で働いてなんているけど、まだドイツでとっていない単位がある。明日が試験なんだ。早く勉強して、ドイツに戻って試験受けないと、また卒業が遠のく。」そうやって汗かいてうなされて目が覚めて、自分はもうとっくの昔にDiplom を取得して日本に帰ってきたんだと現実を理解して、ホッと安心することが、今でも時々あります。

 

 

 

でも、トラウマだけど、最高の時間でした。

 

 

自分はドイツで人間が変わったと思います。強くなったと思います。

ドイツ人て、日本人と似て、真面目だけど、それだけじゃなくて、日本人に比べて、「自分はこうありたい」という信念みたいなものが強い気がします。

 

日本人は、自分の意見を言うことや、自分のやりたいことをやるのに、恥ずかしいとか、周りの目を気にすると思います。

でも、ドイツ人は、「自分はこう思う。だからこう行動する」というのがあって、人目を気にせずに、自分が信じた行動をとる気がします。(それで真面目で正義感あって、やさしいから、最強です。)

 

ホロコーストを反省するドイツ人。世界に先駆けて環境問題や自然エネルギーに取り組んだドイツ人。道を歩いて渡ろうとすると、すぐ車が止まってくれるドイツ人。真面目なだけじゃなくて、自分の信じたことを恥ずかしがらずに素直に言う、行動に移せる人たちにあこがれて、自分も性格がガラリと変わったと思います。

 

もちろん、日本人として、空気読むとか、オブラートにある程度包んでモノ言うとか、そういう部分は今でもとても大事にしていますが、それでも周りが何と言おうと自分の思う通りに行動しようという人間になれたのは、経済学とか、ドイツ語とか以上に、ドイツで何かもっと大事なことを学んだ気がします。